慢性の痛みについて

 この図は、慢性の痛みを考える上で重要な「痛みの悪循環」を示しております。まず赤で示したごとく、様々な要因で起こる炎症が知覚神経を刺激し、脊髄を介して脳に伝わり痛みとして認知されます。ここまでは一次性の炎症に伴う実質の痛みであり、炎症過程が終了すれば痛みそのものも無くなります。ところが実際にはそれだけにとどまりません。

 

 脳から下降性に運動神経・交感神経を刺激し、身体では筋緊張と血管収縮が起こり、痛みを引き起こす物質が生成されます。これが再度知覚神経を刺激し脳で痛みとして認知されます。これが痛みの悪循環です。実際の臨床場面では、これにより痛みはより複雑に、より広範囲となり、治癒の妨げとなっております。

 

 治療において重要なのは、筋緊張の緩和による血流の改善と自律神経の適正化です。炎症過程を速やかに終了させるよう条件を整えることが、いわゆる人が本来持つ自然治癒力を高めることにつながるのです。そのことがこんなにも重要であると理解するには、少々時間がかかりました。